竜王戦第4局2日目が進行中です。
一時、藤井竜王に水匠7が約+1100点と優勢~勝勢のスコアを付けていましたが
71手目、藤井竜王が踏み込まなかったために約+400と、「やや有利」くらいの数値に落ち着きました。
一体何があったのか?その深すぎる理由の一部を説明させて頂きます。
ただし実戦の盤面は使用できませんので、実際の盤面はこちら をご覧下さい。
もし仮に藤井竜王が71手目に▲3六飛と指していたら、下図の局面が想定されました。
▲3六飛以下は△5七と▲6四桂△5六と(△5一飛は▲2一香成とされ、取れば▲3三歩成で負け)
▲5二桂成と進んで上図になります。
ここで平凡に△同金や△同銀なら▲2一香成として、取れば▲3三歩成があるので
先手が簡単に勝てそうなのですが
図から成桂を放置して△5七角!が怖い手。
以下、▲8八玉△2四角成▲6二成桂と進行すると後手玉が安全で
△8六歩(下図)の叩きが痛打です。
評価値は先手+1100点なのですが、仮にここから▲同銀△8五歩に
▲7七銀と引くと△8六香で一気に互角付近に(先手+200点、差がグッと縮まります)。
体感的には逆転模様です。
なので、▲同銀△8五歩に根本の▲7三馬と取れば評価値上は先手が良いのですが
一例としてそこから
△8六歩▲同金に△6七とが次の△7九馬以下の詰めろ。
死線をくぐることになります。
そこで▲9七玉(下図)の早逃げが好手で以下
△7九馬▲8八歩△7七銀には▲8一飛~▲7七桂として
▲9五歩と脱出を目指せばギリギリ先手が凌いでいるようですが、
評価値はともかくかなり怖い展開です。
更に、△7九馬以外にも△8五歩や△4五銀など結構怖い手が多く
とても先手を持って「勝ち」と断言できるような局面では無さそうです。
恐らくは藤井竜王、こういう展開を読みに読んだ上で
▲3六飛を回避したのだと個人的には思いました。
掘り下げてみると本当に深いですね。竜王がこうした展開を読んでいたかどうかは
感想戦になってみないと分かりませんが、トッププロ同士の戦いは
評価値という要素だけはとてもはかりきれない深淵があると感じました。
数字だけ見ると「差が縮まった」となりますが、実際は「もともと難しかった」と
いうことですね。
11時30分現在、依然として広瀬八段が74手目を考慮中。
残り時間は互いに3時間程度となっています。
形勢は先手+400点ほど(57~58%ほど)のいい勝負。
勝利の女神はどちらに微笑むのでしょうか。