名人戦第6局2日目、佐藤天彦名人 VS 稲葉陽八段

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書き始めたのが15時。丁度おやつの時間なので両対局者のおやつを記載しておく。
稲葉:モンブラン + ホットコーヒー+オレンジジュース
佐藤:苺のショートケーキ + りんごジュース

15時現在、局面は第1図まで進んだ。

ここで1、△同銀と2、△62桂!に分かれる。
62桂は屋敷九段が推奨している手。
1、△同銀は以下
▲65桂△同桂▲同桂△64角▲75銀△同角▲73桂成(第2図)と火の出るような攻め合いが予想される。

先手は桂馬を成りこめたが後手の角の利きも急所。これはいい勝負。ソフトはごく僅かに先手持ち。
2.△62桂は面白い手。対しては▲65桂打△同桂▲同桂△42角▲76桂と進んで一見先手がうまくやったようだが、そこで△61桂(第3図)と受けるのが好手で僅かに後手が指せる流れか。

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おやつタイムで糖分補給を終えてますます冴えわたる両者の頭脳の激突から目が離せない。

進んで下図(第2図と書いていますが第4図です)。2、の変化で▲76桂まで同様に進み後手が△83飛と受ける進行になった。ここが大きな分岐点だった。


本譜は上図で▲74歩と取り込んだがこれが悪手。△65歩と桂が取られて名人がはっきり優勢になった。
ここは▲53銀と打ち込む勝負手があった。△65歩なら▲42銀成~▲57銀で次の角打ちを楽しみにして先手が互角以上に戦える形勢だ。


17時29分、第5図まで進んだ。ELMOによるとここで△63桂と打てば先手がしびれているようだ。受けの強い名人なら自然と手が行きそうな手だ。挑戦者はこの苦境を跳ね返してタイに持ち込むことができるだろうか。

 

20連勝なるか?藤井聡太四段 VS 澤田真吾六段

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大型連勝中ということもあり、タイトル戦以上に注目されるこの将棋は千日手を挟んで第4図の局面になった。千日手局はまた後で並べていきたい。


第4図から▲45歩△同歩▲同銀と先手が仕掛ける。▲同銀では▲同桂と桂損覚悟で踏み込む手や、▲35歩を絡める手など色々あったところ。
対して△44歩だと作戦負けになる後手は△86歩▲同歩(▲同銀△65歩▲57角という展開もあった)△85歩▲同歩△95歩と強く反撃して第5図。


上図以下は▲同歩に
1、単に△85桂で変化を許さず一本道へ
2、△75歩を入れて攻め味を広げる
に分岐して、ソフトは何れも「ほぼ互角ながら後手がややリード」という見解。
澤田六段としても、後手番で攻勢をとれているのでここまでは上手くやったという感じか。後手は2の△75歩を選択。本筋の一着だ。藤井四段は形勢はともかくしばらく辛抱が続きそうだ。

 66手目(△75歩)まで残り時間
藤井聡太:2時間40分
澤田真吾:1時間18分

局面は△75歩▲同歩から△65歩と後手がもう一回リズミカルな突きを入れて第6図。後手好調の流れに見えたが、ここで天才が信じられない手を放つ。


上図から▲76角!が凄まじい手。実はエルモの検討で第一候補に挙がった手だったが、まさか指さないだろうと思っていた。恐らくは▲86銀か▲76銀(それでも後手ペースながらいい勝負)と進行していくのだろうと。
実際、棋士室の誰もが予想しておらず、更にこの手を見た澤田六段が残り時間が少ないにも関わらず長考に入ったところを見ると、完全に意表を突かれたのではないだろうか。恐ろしい、恐ろしすぎる。藤井聡太。
▲76角に対しては△85桂▲86銀△47歩▲58金△38角というこれまた人間が選ばなそうな手順で「ほぼ互角」とエルモは示していたが、少なくとも実戦でこの順をじっくり読み、「ほぼ互角」になるという結論に辿り着くのは至難の業だと思う。実戦は▲76角に△52金▲86銀△66歩(第7図)と進んだが

角筋が通ったため▲68歩と受けておけば先手十分なようだ。
と思っていたら実戦は▲77桂。更に手厚くした手だが、これは果たしてどうなるのか。後手の選択肢としては
1、△44歩でいったん銀を追い払う
2、△67角とカチ込んでいく
といったところ。ソフト評価値はほぼ互角に戻った。

実戦は△44歩▲56銀△35歩▲同歩△85桂▲同桂(ソフトによると▲同角△36歩▲45桂△同歩▲87玉!という変態的手順も有力だったようだが流石にほとんどの人は指さないだろう)△36歩(第8図)と澤田の猛攻が始まった。次に桂を取って△64桂があるがおしゃれな受けがあった。

ここで▲45桂!△同歩▲64歩としたのが洒落た手順。45に捨てることによってのちの▲45銀を可能にしている。ここで澤田は△72桂(第9図)と打つ手に本局の命運を託した。先手の指し手はほぼ2択。1、▲63歩成か2、▲65銀か。


1、の▲63歩成は以下A、△同金なら▲43角成△同金▲52銀で変化はあるものの先手やや良しか。B、△84桂▲65角△63金も▲34桂と攻めあって、これも先手がいけそうな感じだ。

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2、の▲65銀には△46角!と打つのが好手で、次の△37歩成と△55角~△67歩成の筋を見せてこれは後手がやや指せるようだ。
藤井四段の選択やいかに。18時24分。
持ち時間
藤井聡太:2時間10分
澤田真吾:0時間08分
 
藤井四段、ここから果敢に▲63歩成。対して1のAの変化になっていくわけだが、▲52銀打に澤田六段渾身の勝負手が襲い掛かる。それが第10図。


この△76角が藤井四段の思考回路を狂わせたか。まだたっぷり時間が残っていたが、▲77金と指した手が致命傷になりかねない悪手で、△87歩▲同金(▲78玉なら△67角打▲同銀△同歩成▲同金△88歩成▲68玉△87角成で後手良し。第11H図)


△67角打!(第11図)が渾身の逆転打。一気に後手が優勢を掴み取った。第10図では▲68桂と受けておけば、以下△62金と引くくらいしかなく、▲76桂△52金に▲74角!が好打(△63銀なら取って52銀だし42金なら▲63角成)で先手が良かった。▲77金は△87歩と打たれる厳しさを見落としたのだろうか。藤井四段らしからぬミスだったが、△76角と打った澤田六段がそれだけ凄かったということだろう。

本譜は以下▲67銀△87角成▲同玉△67歩成と一気に後手が優勢~勝勢の局面を築いていく。第12図までとなって鮮やかな一手があった。

上図から△67銀!が決め手級の一着。流石に万事休したと思われたが
藤井四段も▲同角から▲33成銀△同玉▲34銀△44玉▲22角と劣勢ながらも鋭く迫る。そして第13図。とうとう後手が逃げ切ったかに見えたが。


上図から▲76桂!が魔手。澤田六段も頭が真っ白になったことだろう。△75玉と逃げれば勝ちだった(澤田六段は▲77角成△同と▲66銀△同玉▲67銀△75玉・・・と追われて詰まされると思ったとのこと。実際はそんなことはなかった。藤井四段の終盤力や▲76桂の魔力、1分将棋という状況が澤田六段を狂わせたのかもしれない・・・)
本譜は△同金▲67歩(第14図)となって、

上図で△85飛ならまだ後手が良かった(▲65銀~▲66金で76の金を取りつつ馬を作ることは出来るが、駒が足りない)ようだが、△46角と攻防風に打った手が致命的な悪手となってしまった。▲57銀と受けられ、△85飛には▲46銀△同歩▲65銀!△同玉▲66金で先手が勝つ。以下、第15図となって先手はっきり優勢だが、澤田六段が最後の勝負手を放つ。


上図から△78銀!が最後の勝負手。以下▲同玉△67桂成▲同銀△87飛成と大迫力の追い込みだが、▲79玉△67金(第16図)で藤井が決め手を放つ。


上図から▲55角成△75玉▲65金△85玉に▲77桂!(△同金なら▲96銀△同竜▲77馬)△76玉に▲75金!△同玉▲65馬から竜を抜いて先手勝勢に。
以下、第18図となって華麗な即詰みがあった。


上図から▲81飛△83桂▲85歩△73玉に▲74歩までで後手投了。
以下は△同玉なら▲56角で詰みだし、△同金も▲82角△62玉▲63歩△同玉▲61飛成~▲52銀で詰む。
澤田六段にしては非常に珍しい大逆転劇だったが、上に書いた藤井四段の「魔力」がそうさせた可能性は高い。
ともあれこれで20連勝。何とかあと9つ勝って、連勝数歴代1位を獲得してほしい。今後は毎回のようにタイトルホルダーやタイトル戦の常連組レベルと当たるようになるため、29連勝は今回が最初で最後のチャンスになるだろう。

 

 

棋譜並べのやり方

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以前、初心者~初段 まで強くなる方法と初段~六段まで強くなる方法という記事を書きました。
ブログ記事は こちら 
動画版は こちら です。

が「棋譜並べ」について述べていなかったので追記します。

棋譜並べ:詰将棋、必死問題、次の一手、手筋、定跡等が複雑に絡み合っているので実戦かそれ以上に難しい。早くても二段位から始めればいいと思います。

現代版棋譜並べのやり方

1、自分が好きな棋士や、自分が指したいと思う戦法の棋譜をネットで検索(今はいいサイトいっぱいありますが、昔は棋譜を探すのすら大変でした…)
2、まずは自力で並べる(30~1時間程度かけてじっくりと。ここは昔と一緒です)。で、疑問点や感心した手などをメモしておく。

3、ソフトで解析して、答え合わせ。棋譜並べしていて「これ凄いな」と思った手や、ソフト解析で自分が思いもしなかったような凄い手が見つかった場合はスクリーンショット(できない人はスマホで写真撮りましょう)してフォルダに入れておく
ソフトは、有料版を購入できる余裕があれば
 マイナビ 将棋レボリューション 激指14 
がおすすめです。5月28日現在、7000円台で購入可能です。棋譜並べ以外でも秒読み付でソフトと戦えたり、駒落ちや強さ設定が出来たりしていい感じです。フリーソフトと違って導入や設定で躓くこともありません。
参考記事:エルモと激指14の違い

※昔はソフトなんてなかったので、強い人に恐る恐る聞くしかありませんでした。それでも正しい答えが返ってくるとは限らず…聞いたら何かお礼しなければならず…非常にかったるかったです。今は本当に、本当にいい時代ですね。

4、もう一度何も見ずに自分で並べてみる(変化手順含めて)。「この手はよかったな」「これが疑問手だったんだよな」とか「ここで本当は凄い手があったんだよな」などと思いながら並べられるようになっていればOKでしょう。

1~4をこなせばバッチリでしょう。

昔は棋譜を探すのも面倒だし棋譜を並べても自分じゃよくわからないし強い人に聞くのも面倒だし・・・という感じで、将棋の勉強が嫌で嫌で仕方ありませんでした(笑)
でも、プロになれた人達はそこを才能や将棋に対する愛や根性で乗り越えたわけですから、心から尊敬しています。
今は将棋の勉強が楽しくて仕方ありません。ソフトを持ってあの頃に戻れたらなぁ。

【過去の棋譜並べがしたい方用将棋年鑑リンク】

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名人戦第5局出た!佐藤名人の「横歩取り・勇気流」終局まで

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名人戦第5局
先手:佐藤天彦名人
後手:稲葉陽八段
戦型:横歩取り 勇気流


第1図からはプロの前例は主に△85飛と△22銀(本譜)に分岐。△82飛もある。
△85飛なら▲36歩と指し、△25飛なら▲28歩と受ける(第1変化図)

その変化は次の▲84飛や▲37桂があるため、ソフト評価値的には先手がやや指せるようだ。そこで、△25飛 とは指さずに△52玉と上がり、以下はほぼ互角(ソフトはやや先手持ち。+100程度)。
 本譜は△22銀以下先手は素早く右桂を活用し。後手は飛車を深く引いて角交換して飛車を追って迎撃の構えで第2図。激しいことになった。


第2図から▲83歩!△同飛▲84歩△82飛▲35飛△84飛▲75角(第3図)と激しい変化に突入。ここで昼食休憩。注文は両者とも「岡山県産黒毛和牛すき焼き丼」。おいしそうだ。


まだ前例はある。因みにソフトでは▲75角に代えて▲66角を推奨している。飛車がどこに逃げても▲45桂という感じで、確かに面白そうだ。今度深く調べてみたいと思う。
本譜は▲75角に△82飛と引いたが、△24飛の変化もあるようだ。変化の一例としては▲53角成△62金▲75馬△44角(下図)。


以下▲25歩と打って難解。変化はあまりにも多岐に渡るので省略するが、ソフト評価値はほぼ互角を示している。

本譜は△82飛に対して▲45桂が気持ち良い手で、以下第4図へと進展した。


第4図が15時20分現在の局面で、形勢は先手やや良しのようだ。次に▲44飛~▲65角の筋があるが、後手はどう受けるのだろうか。一例としては△55角とかわして、以下▲46銀△64角▲同角△同歩▲77角!という進行が予想されている。
15時のおやつは両者「モンブラン」と佐藤名人が「ピオネジュース」稲葉八段が「ホットコーヒー」

実戦は下図のように進行した。予想手順の▲同角にかえて▲66角だった。


後手はここで△42金右と寄って難解だったが、実戦は△44歩とひねった受けを見せた。対して▲55銀と出て先手優勢になった。
以下、第6図(18時30分現在)と進行した。ここで封じ手かもしれない。


以下、予想される進行は
1、▲24飛△23歩▲83歩成△同飛▲23飛成△同金▲65角(第7図。先手優勢。+1000以上) 
2、▲83歩成(1に合流)


因みに第7図で△32銀なら▲21飛!という鬼手がある。
△同銀なら▲43角成で終了。

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3、▲44飛 
これは先手優勢ながら、まだヤマ場もありそう。

ここで名人が封じ手の意志を示した。1か2なら早い終局が予想される。

封じ手はやはり▲24飛。対して稲葉八段は△22歩(第8図)とひねった受けを見せたが、これも7手1組の爽快な手順があった。


上図から▲83歩成△同飛▲65角△82飛▲22飛成△同金▲43角成!
が痛快な手順。形勢は+1300ほど先手に傾いた。
以下、稲葉八段も必死に反撃して△37歩で第9図。


上図から▲29銀が正確な受け。同銀なら△29飛が少しうるさかった。その後、リードを拡大して第10図。▲44馬と寄って次の▲65桂を見せたが後手の次の手が根性のある手だった。


上図から△74飛が執念の一着。以下▲64金には△同飛▲同角△84飛と横の田楽刺しが決まる。そこから▲55角△同桂▲同馬となれば次の桂打ちを見せて先手優勢ながら若干差が詰まる。ということで佐藤は▲26馬。これも正着。落ち着いた受けが光る。
以下丁寧に差を広げて第11図。次の手もまた渋かった。


上図から▲38銀が好手。37歩は二歩で打てない。
これで後手は万事休す。


上図が終局図になった。1局を通して、鋭い踏み込みで差をつけた後は渋い受けを連発して完勝だった。
これで名人戦は3勝2敗。挑戦者がタイに戻すか、名人が押し切るか。目が離せない。

 

 

 

電王戦2番勝負第2局 佐藤天彦名人 VS PONANZA 

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対局日:2017年05月20日
先手:佐藤天彦名人
後手:Ponanza 
持ち時間:各5時間

初手▲26歩に△42玉!とコンピュータにはよくある出だしになった。(未だに見慣れないが・・)そして第1図。飛先交換のチャンスだが・・・。


名人の指し手は▲76歩。ここでは飛先交換すると、1歩手にして飛先が軽くなる得よりも1手損するデメリットが大きいのかもしれない。実際、飛先交換させてから後手が早繰り銀にする指し方は今季の佐藤ー稲葉の名人戦でも登場し、後手が勝ってしまった。ということもあってか、先手は飛先交換を見送り、局面は普通の各換わりに進展していった。そして第2図。凄い形になった。


△62の銀を△51に引いた局面だが、個人的には初めてみた手。意味は52銀~43銀の銀矢倉を作ろうということだが通常は△54銀~△43銀というルートなのでこれは斬新だった。ただし形勢がここからやや先手に触れ始めたことを考えると、疑問の構想だった可能性はある。第2図以下、名人は一直線に棒銀を繰り出して2筋の歩交換を果たした。これが大きかったようだ。第3図と進展して、やや先手作戦勝ちか。評価値はプラス200程度。


第3図で▲96歩と突いてバランスをとっていけば、後手は徐々に手詰まりに陥っていくので先手がやれていたようだ。本譜は先手が穴熊の構想を見せていった。これを見て私は、名人は恐らく「いつも通り(人間相手のように)指そう」と決めていたのではないだろうかと思った。確かに人間相手なら非常に実戦的に好着想となりそうなところだが、相手はPonanza。右四間が先手陣のバランスの悪さを咎めており、第4図まで進んで後手作戦勝ち模様になった。


第4図で放置すると△65歩~△39角や△73桂 が来るので、先手から▲55歩と果敢に攻めていった。Ponanza相手に先に仕掛けるのは非常に勇気がいるところだが、名人は怯まなかった。対して△同歩なら▲54歩と垂らして先手も面白そうだが・・・△56角!が強烈な切り返しだった。この手を境に一気にPonanzaが差を広げていく。そして第5図。気が付けば端桂で守りの銀をソッポに行かせ、飛角は急所に利き、△86歩と穴熊の急所に歩が突き刺さっている。あっという間の大差だ。


名人もここで▲45桂!とさすがの強烈な勝負手で切り返す。第6図となり
穴熊は解体されてしまったが・・・・

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第6図から▲78角!が根性を見せた粘り。後手も間違えると▲53歩成が間に合ってきて大変だが、△63竜と引いたのが非情なまでに正確な受け。以下、桂と香を奪い合って第7図。天王山に馬を引き付けて王手!だが・・


上図から△44金と馬に当てたところで名人の投了となった。馬が逃げるようでは△46歩で絶望だし馬を切ってしまえば先手陣は持たない。1局を通して、名人の積極的な姿勢が目立っていた。変に腰が引けた指し方ではなく、あくまでも己の将棋を貫き通した将棋で敗戦とは言えとても立派だったと思う。さわやかな気分で観戦することができた。PONANZAは相変わらず悪魔のように強かった。

佐藤名人が僅差ではあるが優位に立つ場面もあり、非常に見応えのある対局だった。今後もまた人間対ソフトの対局を見てみたいと思う。

この将棋の棋譜並べ動画は こちら 

 

第75期名人戦 佐藤天彦名人 VS 稲葉陽八段 第4局

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昨日の記事は こちら (2日目お昼まで)

さて、上の記事から△84桂に▲99玉とアナグマに囲いつつ△75歩▲同歩△76歩を避け、△34歩と打たれた局面。ここで角をどこにひくかな?と思ってみていたらなんと・・・


何と上図で▲44角!これにはびっくりした。ソフトで検討すると「最善手」と出るので二度びっくり。信じられないが△同銀▲同歩となった形が次の▲75歩~▲54角を狙っていたり先手玉がとても固かったりするのでそうなのか・・・と無理矢理自分を納得させた。といっても、駒得が大きく若干後手有利。先手としても、若干不利を承知の勝負手だったのだろう。

進んで第2図。名人が△76桂▲同銀△49角と思い切った攻めに出たところ。ここで先手に勝負手があったようだ。


本譜は▲48飛△76角成▲77銀△54馬と自然な進行だが名人の馬が手厚く、後手のリードが広がった格好になった。ここは▲58飛!と回る勝負手があったようだ。以下一例としては△57歩▲同金△69銀となって怖すぎる格好だが、そこで▲67銀打と頑張り、△58角成▲同金△78銀成▲同銀△79金▲87銀引△29飛▲88銀打・・・と永遠に受け続ける展開になる。こうなれば評価値はほぼ互角。先手もまだ十分戦えたようだ。ただ、とても恐ろしくて選び辛い順だと思う。本譜に戻って第4図。挑戦者が48の飛を▲47飛と移動し△59銀の筋を消しつつ飛を横に使う面白い手を指したところだが、名人の次の一手が素晴らしかった。

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上図から△33桂。これが格調高い手だった。意味は次に△56銀~△45桂とさばくということ。本譜もこれが実現し、最終的には21の桂が57まで出世することになった。とても感動させられた手だった。続いて第5図。挑戦者の鋭い勝負手が飛んだところだったが、ここで名人が手厚い一着を放つ。


上図から放置すると▲75歩△同歩▲83角のような筋が気になるが、
△84銀と埋めたのが好手。これで先手から思わしい手が無い。△33桂と言い、△84銀といい、名人が落ち着いた手でリードを広げていく。そして着実にリードを広げて第6図。名人が決めに出る。


ここから△同馬▲同銀△67銀!が鮮やかな寄り身。清算して△87銀と打てばほぼ必至だ。△67銀に▲87銀打と根性の受けを見せたが、いくばくもなく名人が寄せ切った。
これで名人戦は2勝2敗のタイ。ここからの「三番勝負」でどちらが勝つのか、目が離せない。

 

デビュー17連勝なるか?藤井聡太四段 VS 西川和宏六段

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第67期王将戦一次予選
持ち時間各3時間
戦型:先手中飛車 VS  後手超速
先手:西川和宏六段
後手:藤井聡太四段

棋譜並べ動画は こちら 

第1図。角道も開けずにいきなり△75歩と開戦するのが後手超速のキモ。
元々はソフトの発案で、有力さに気づいたプロがこぞって採用するようになった。第1図では▲同歩、▲67銀ともに有力だが本譜は▲同歩。


仮に第1図▲67銀なら△64銀で、そこで更に1、▲75歩と2、▲65歩に分岐。この辺は変化も多いところで、動画の中で解説しているが1、▲75歩なら△同銀▲68角△86歩▲46角の要領でさばく。2、▲65歩なら△76歩▲同銀△75歩▲64歩△76歩▲95角△64歩▲73銀という要領で戦う。何れもソフト評価値は若干居飛車良し。
本譜は第1図から▲同歩△64銀▲65歩(同銀なら▲67銀)△75銀▲54歩△同歩▲同飛と進展して▲55角を狙っていった。これもソフトの評価値は恐ろしいことにわずかではあるが居飛車側に触れている。
進んで第2図。


西川六段の指し手に大きなミスがあったようには到底思えないが、第2図の△87歩の局面でソフト評価値は+300程度で大きく後手に振れた。以下は▲64歩△88歩成▲77銀成△同銀▲同桂に△45銀打と飛車角両取りがかかり、見た目にも後手ペースがはっきりしてきた。
そして第3図で▲63歩成に対して恰好いい手が出る。


上図で△47銀成!が流石の手だった。▲同玉は△74角でと金を抜かれて厳しいと見た西川六段は▲28玉と鬼辛抱だが、流石に角損ではまずそうだ。
それでも進んで第4図となってみると、先手陣は好形で駒損とはいえ攻めがつながりそうだが、またしても後手に好手があった。

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上図から△同金が正確な応手。この手以外では飛車の横利きが止まっておりまぎれるところだった。以下▲同金△同飛となって非常にスッキリした形になったうえ、遊んでいた飛車が活用できた。以下、右辺からと金ににじりよられながらも先手が必死に粘って第5図。▲63角が次の▲41角成~▲23飛成と▲52とを見せてうるさそうだが。


第5図で△31金がまたまた正確な手。以下▲54金△58と寄▲55金△49とで
はっきり後手の勝ちが見えてきた。そして第6図。華麗な詰みがある。


第6図から△88飛成▲58歩に△38金!!と打ち込んだところで先手の投了となった。以下、一、▲同銀なら△39銀▲同玉△48金▲28玉△38金▲18玉に△28金と押し売りして、▲同玉に△58竜で▲38銀(角)なら△39銀だし▲38金なら取って△47と以下簡単に詰む。二、▲同玉なら△47と▲28玉△39銀▲同玉△38金以下詰み。
圧倒的な内容で、これでデビュー以来公式戦17連勝となった。次の相手は澤田六段と強敵だが、ここであっさり勝つようなら王将リーグ入りも十分見えてくる。

 
藤井聡太関連記事は こちらから 

 

渡辺明竜王 VS 豊島将之八段 

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羽生善治王位への挑戦権を懸けた第58期王位戦挑戦者決定リーグ白組
先手:渡辺明竜王
後手:豊島将之八段
戦型:角換わり

豊島将之八段といえば昨期念願のA級昇級を決め、5月7日に行われた対局で非公式戦とは言え藤井聡太四段に快勝した乗りに乗っている棋士だ。
渡辺竜王が二冠王の意地を見せるか、豊島八段が意地を見せるかという構図となって第1図。後手が右銀の位置を決めない工夫をしており先手としても慎重な駒組みが求められている。後手は棒銀、早繰り銀、腰掛け銀の余地が残っている。豊島は藤井四段相手にも似たような陣形から早繰り銀にして快勝している。


第1図から△73銀ととうとう銀の形を決めた。対して▲56銀△84銀と後手は棒銀を明示。先手は▲65銀!と強気の受けを見せて早くも盤上に火花が散った。

以下、7筋で歩交換が行われ第2図。先手としては銀を繰り替えて手厚い陣形を作った。対して後手も△73銀~△74歩と銀の繰り替えを狙ってじっくりとした将棋になった。


以下持久戦になって第3図。先手は攻め駒不足を右金の活用で補う方針だ。
対して後手は一歩持って迎撃の構え。elmoの評価値は「いい勝負」。豊島サイドから見ると後手番でこの局面になればまずまずといったところか。


第3図から▲45歩と果敢に仕掛けた。以下△同歩に▲56金!と世にも珍しい「腰掛け金」の攻めになった。elmoの評価値的にも、この攻めは成立しているようだ。後手は△69角と敵陣深くに打ち込む。対して先手が▲24歩の突き捨てを入れて第4図。同銀か、同歩か悩ましいところだが。


豊島の指し手はなんと△36角成!!
非常に怖いところだが、これで受けきっているとみている。
この一手で評価値は一気に後手に触れた。以下、▲23歩成△同金▲25桂と怖い攻めが続くが、△44銀!とソッポに逃げて大丈夫とみている。以下、▲13桂成!△同玉(同香なら▲11角)▲32角に△27歩がピッタリで、完全に先手切れ模様になった。
そして第5図。後手玉の逃げ道をふさいでまだまだに見えるがここで素晴らしい手があった。

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第5図で△41飛!が華麗な決め手。馬を助ける適当な手段がない。
以下、泣く泣く▲55馬だが△同銀で大駒がすべて後手に行ってしまった。以下は▲同金に△37角と追い打ちをかけて、数手で後手が勝ち切った。

「豊島?強いよね?」のフレーズに恥じない見事な勝ち方だった。果たして挑戦権をつかみ取れるかどうか、今後の動向に注目したい。

棋譜並べ動画は こちら (11分)

忙しい人のための棋譜並べ動画は こちら (3分)

 

 

藤井聡太四段対大橋貴洸四段 第48期新人王戦2回戦 レビュー

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第48期新人王戦二回戦
先手:大橋貴洸四段 
後手:藤井聡太四段
戦型:角換わり▲58金型VS△62金型

後手の藤井四段がやや作戦勝ち模様の駒組だったが、仕掛けのチャンスを見送ったため逆に大橋四段に鋭く仕掛けられて第1図。
△45歩に対して、次の攻めが鋭かった。

上図から▲同桂!が強手ではっきり先手がペースをつかむ。
以下△同桂▲53角成△42角にじっと▲26馬と引き上げて先手が良さそうだ。以下も順調に先手がリードを広げて第2図。ここでは後手がはっきり悪いが、藤井四段の指した次の手が凄かった。


上図から△28成銀!▲75銀にも△22玉。苦しい局面でじっと手渡し。
まるであの初代七冠王の全盛期を見ているような指し回しだ。28成銀は一番驚いた一着だった。以下、大橋四段は緩みなく攻めて第3図。ここで決め手級の1着が出る。

上図から▲86香!が好手。△85歩なら取って▲72馬だ。実戦は△83桂とまたしても辛い辛抱を強いて、このまま先手が押し切りそうなムードが濃厚になってきたが・・・第4図で事件が起こる。


上図から▲93桂成!△同角▲94歩(第5図)が一見すると妙手順。桂を犠牲に角を殺して先手必勝、と思えたが違った。絶妙の切り替えしがあったのだ。

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第5図で△84角!!!がお返しの妙手。▲同香なら△85桂▲98歩△64香が厳しい。実戦は角を取れずに▲54銀だがこれでは完全に流れがおかしくなった。▲54銀では▲74銀と85桂を封じておけばまだわずかに先手リードだった。一度逆転すれば藤井四段の終盤力は歴代最強レベルだ。瞬く間に勝勢を築き、第6図で華麗な寄せがある。


第6図から△95桂打▲78玉△77歩!▲同金△87金▲同金△同桂成▲同玉△95桂と華麗に詰まして後手の大逆転勝ちとなった。大橋四段としては第4図の▲93桂成さえなければ・・・という無念の一局だったかもしれない。この将棋が、藤井四段のデビュー以来の連勝の中で今のところ一番危ない将棋だったと思う。

 

 

 

 

 

藤井聡太四段 VS 所司和晴七段 竜王戦6組レビュー

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戦型:角換わり48金型 VS 52金型
先手:藤井聡太四段
後手:所司和晴七段
竜王戦6組


第1図、藤井四段がいつものように(?)▲45桂ととんだところ。
以下△22銀には▲24歩・・・ではなく、▲26角と打つのが△65歩、△54銀、△52金型に対する定跡。▲26角で後の端攻めを見せつつ桂取りを防ぎつつ壁銀を固定してやや先手良し、がソフトの見解。定跡も短期間で恐ろしく進歩した。以下、端を攻める先手に後手が8筋から反撃して第2図。大迫力の攻めで後手良しにすら見えるが、次の手が流石の受けだった。


第2図から▲88香が好手。後手も△83香と返すが▲85香△同飛に▲86歩がまた強い受け。以下、第3図となって先手が逆に7、8筋の制空権を奪ってしまった。そして△87歩の垂らしに▲88歩で完封かと思いきや、後手の勝負手が飛ぶ。


第3図で△98銀!が後手の強烈な勝負手だった。これは取るしかない。以下、△18香成を一旦利かして△98桂成で第4図。次の△88歩成と△54香が厳しく先手ピンチにも見えたが、ここからの切り込みが圧巻だった。


ここから▲33角成!△同桂▲53角成!が凄い踏み込み。ただでさえ危険そうなところに駒を渡して大丈夫か?と思ってしまうが、この時点で読み切っていたのかもしれない・・・そして罠だらけの第5図へ。▲42竜で勝ちに見えるが。


第5図で▲42竜で勝ちに見えるが、それは△88歩成▲69玉△87角▲78銀△同角成▲同金△同と▲同玉△87銀!▲同玉△85飛で先手玉が詰んでしまう。
この罠を見切って▲51金が正確な手で、これで先手が余している。以下、第6図。ここからは実戦詰将棋だ。

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第6図から、▲13銀△33玉▲22銀打!△同金▲同銀生△同玉▲31銀!まで先手勝ちになった。華麗な詰将棋のような手順だ。以下は△同玉に▲41竜△22玉▲32金で詰む。
所司七段も的確な反撃や強烈な勝負手を繰り出したものの、藤井四段が圧倒的な力でそれを封じ込めたという印象だった。