電王戦2番勝負第2局 佐藤天彦名人 VS PONANZA 

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対局日:2017年05月20日
先手:佐藤天彦名人
後手:Ponanza 
持ち時間:各5時間

初手▲26歩に△42玉!とコンピュータにはよくある出だしになった。(未だに見慣れないが・・)そして第1図。飛先交換のチャンスだが・・・。


名人の指し手は▲76歩。ここでは飛先交換すると、1歩手にして飛先が軽くなる得よりも1手損するデメリットが大きいのかもしれない。実際、飛先交換させてから後手が早繰り銀にする指し方は今季の佐藤ー稲葉の名人戦でも登場し、後手が勝ってしまった。ということもあってか、先手は飛先交換を見送り、局面は普通の各換わりに進展していった。そして第2図。凄い形になった。


△62の銀を△51に引いた局面だが、個人的には初めてみた手。意味は52銀~43銀の銀矢倉を作ろうということだが通常は△54銀~△43銀というルートなのでこれは斬新だった。ただし形勢がここからやや先手に触れ始めたことを考えると、疑問の構想だった可能性はある。第2図以下、名人は一直線に棒銀を繰り出して2筋の歩交換を果たした。これが大きかったようだ。第3図と進展して、やや先手作戦勝ちか。評価値はプラス200程度。


第3図で▲96歩と突いてバランスをとっていけば、後手は徐々に手詰まりに陥っていくので先手がやれていたようだ。本譜は先手が穴熊の構想を見せていった。これを見て私は、名人は恐らく「いつも通り(人間相手のように)指そう」と決めていたのではないだろうかと思った。確かに人間相手なら非常に実戦的に好着想となりそうなところだが、相手はPonanza。右四間が先手陣のバランスの悪さを咎めており、第4図まで進んで後手作戦勝ち模様になった。


第4図で放置すると△65歩~△39角や△73桂 が来るので、先手から▲55歩と果敢に攻めていった。Ponanza相手に先に仕掛けるのは非常に勇気がいるところだが、名人は怯まなかった。対して△同歩なら▲54歩と垂らして先手も面白そうだが・・・△56角!が強烈な切り返しだった。この手を境に一気にPonanzaが差を広げていく。そして第5図。気が付けば端桂で守りの銀をソッポに行かせ、飛角は急所に利き、△86歩と穴熊の急所に歩が突き刺さっている。あっという間の大差だ。

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名人もここで▲45桂!とさすがの強烈な勝負手で切り返す。第6図となり
穴熊は解体されてしまったが・・・・


第6図から▲78角!が根性を見せた粘り。後手も間違えると▲53歩成が間に合ってきて大変だが、△63竜と引いたのが非情なまでに正確な受け。以下、桂と香を奪い合って第7図。天王山に馬を引き付けて王手!だが・・


上図から△44金と馬に当てたところで名人の投了となった。馬が逃げるようでは△46歩で絶望だし馬を切ってしまえば先手陣は持たない。1局を通して、名人の積極的な姿勢が目立っていた。変に腰が引けた指し方ではなく、あくまでも己の将棋を貫き通した将棋で敗戦とは言えとても立派だったと思う。さわやかな気分で観戦することができた。PONANZAは相変わらず悪魔のように強かった。

佐藤名人が僅差ではあるが優位に立つ場面もあり、非常に見応えのある対局だった。今後もまた人間対ソフトの対局を見てみたいと思う。

この将棋の棋譜並べ動画は こちら 

 

渡辺明竜王 VS 豊島将之八段 

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羽生善治王位への挑戦権を懸けた第58期王位戦挑戦者決定リーグ白組
先手:渡辺明竜王
後手:豊島将之八段
戦型:角換わり

豊島将之八段といえば昨期念願のA級昇級を決め、5月7日に行われた対局で非公式戦とは言え藤井聡太四段に快勝した乗りに乗っている棋士だ。
渡辺竜王が二冠王の意地を見せるか、豊島八段が意地を見せるかという構図となって第1図。後手が右銀の位置を決めない工夫をしており先手としても慎重な駒組みが求められている。後手は棒銀、早繰り銀、腰掛け銀の余地が残っている。豊島は藤井四段相手にも似たような陣形から早繰り銀にして快勝している。


第1図から△73銀ととうとう銀の形を決めた。対して▲56銀△84銀と後手は棒銀を明示。先手は▲65銀!と強気の受けを見せて早くも盤上に火花が散った。

以下、7筋で歩交換が行われ第2図。先手としては銀を繰り替えて手厚い陣形を作った。対して後手も△73銀~△74歩と銀の繰り替えを狙ってじっくりとした将棋になった。


以下持久戦になって第3図。先手は攻め駒不足を右金の活用で補う方針だ。
対して後手は一歩持って迎撃の構え。elmoの評価値は「いい勝負」。豊島サイドから見ると後手番でこの局面になればまずまずといったところか。


第3図から▲45歩と果敢に仕掛けた。以下△同歩に▲56金!と世にも珍しい「腰掛け金」の攻めになった。elmoの評価値的にも、この攻めは成立しているようだ。後手は△69角と敵陣深くに打ち込む。対して先手が▲24歩の突き捨てを入れて第4図。同銀か、同歩か悩ましいところだが。


豊島の指し手はなんと△36角成!!
非常に怖いところだが、これで受けきっているとみている。
この一手で評価値は一気に後手に触れた。以下、▲23歩成△同金▲25桂と怖い攻めが続くが、△44銀!とソッポに逃げて大丈夫とみている。以下、▲13桂成!△同玉(同香なら▲11角)▲32角に△27歩がピッタリで、完全に先手切れ模様になった。
そして第5図。後手玉の逃げ道をふさいでまだまだに見えるがここで素晴らしい手があった。

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第5図で△41飛!が華麗な決め手。馬を助ける適当な手段がない。
以下、泣く泣く▲55馬だが△同銀で大駒がすべて後手に行ってしまった。以下は▲同金に△37角と追い打ちをかけて、数手で後手が勝ち切った。

「豊島?強いよね?」のフレーズに恥じない見事な勝ち方だった。果たして挑戦権をつかみ取れるかどうか、今後の動向に注目したい。

棋譜並べ動画は こちら (11分)

忙しい人のための棋譜並べ動画は こちら (3分)

 

 

藤井聡太四段対大橋貴洸四段 第48期新人王戦2回戦 レビュー

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第48期新人王戦二回戦
先手:大橋貴洸四段 
後手:藤井聡太四段
戦型:角換わり▲58金型VS△62金型

後手の藤井四段がやや作戦勝ち模様の駒組だったが、仕掛けのチャンスを見送ったため逆に大橋四段に鋭く仕掛けられて第1図。
△45歩に対して、次の攻めが鋭かった。

上図から▲同桂!が強手ではっきり先手がペースをつかむ。
以下△同桂▲53角成△42角にじっと▲26馬と引き上げて先手が良さそうだ。以下も順調に先手がリードを広げて第2図。ここでは後手がはっきり悪いが、藤井四段の指した次の手が凄かった。


上図から△28成銀!▲75銀にも△22玉。苦しい局面でじっと手渡し。
まるであの初代七冠王の全盛期を見ているような指し回しだ。28成銀は一番驚いた一着だった。以下、大橋四段は緩みなく攻めて第3図。ここで決め手級の1着が出る。

上図から▲86香!が好手。△85歩なら取って▲72馬だ。実戦は△83桂とまたしても辛い辛抱を強いて、このまま先手が押し切りそうなムードが濃厚になってきたが・・・第4図で事件が起こる。


上図から▲93桂成!△同角▲94歩(第5図)が一見すると妙手順。桂を犠牲に角を殺して先手必勝、と思えたが違った。絶妙の切り替えしがあったのだ。

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第5図で△84角!!!がお返しの妙手。▲同香なら△85桂▲98歩△64香が厳しい。実戦は角を取れずに▲54銀だがこれでは完全に流れがおかしくなった。▲54銀では▲74銀と85桂を封じておけばまだわずかに先手リードだった。一度逆転すれば藤井四段の終盤力は歴代最強レベルだ。瞬く間に勝勢を築き、第6図で華麗な寄せがある。


第6図から△95桂打▲78玉△77歩!▲同金△87金▲同金△同桂成▲同玉△95桂と華麗に詰まして後手の大逆転勝ちとなった。大橋四段としては第4図の▲93桂成さえなければ・・・という無念の一局だったかもしれない。この将棋が、藤井四段のデビュー以来の連勝の中で今のところ一番危ない将棋だったと思う。

対局の棋譜並べ動画はこちら(5月13日公開)

 

 

 

 

藤井聡太四段 VS 所司和晴七段 竜王戦6組レビュー

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戦型:角換わり48金型 VS 52金型
先手:藤井聡太四段
後手:所司和晴七段
竜王戦6組


第1図、藤井四段がいつものように(?)▲45桂ととんだところ。
以下△22銀には▲24歩・・・ではなく、▲26角と打つのが△65歩、△54銀、△52金型に対する定跡。▲26角で後の端攻めを見せつつ桂取りを防ぎつつ壁銀を固定してやや先手良し、がソフトの見解。定跡も短期間で恐ろしく進歩した。以下、端を攻める先手に後手が8筋から反撃して第2図。大迫力の攻めで後手良しにすら見えるが、次の手が流石の受けだった。


第2図から▲88香が好手。後手も△83香と返すが▲85香△同飛に▲86歩がまた強い受け。以下、第3図となって先手が逆に7、8筋の制空権を奪ってしまった。そして△87歩の垂らしに▲88歩で完封かと思いきや、後手の勝負手が飛ぶ。


第3図で△98銀!が後手の強烈な勝負手だった。これは取るしかない。以下、△18香成を一旦利かして△98桂成で第4図。次の△88歩成と△54香が厳しく先手ピンチにも見えたが、ここからの切り込みが圧巻だった。


ここから▲33角成!△同桂▲53角成!が凄い踏み込み。ただでさえ危険そうなところに駒を渡して大丈夫か?と思ってしまうが、この時点で読み切っていたのかもしれない・・・そして罠だらけの第5図へ。▲42竜で勝ちに見えるが。

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第5図で▲42竜で勝ちに見えるが、それは△88歩成▲69玉△87角▲78銀△同角成▲同金△同と▲同玉△87銀!▲同玉△85飛で先手玉が詰んでしまう。
この罠を見切って▲51金が正確な手で、これで先手が余している。以下、第6図。ここからは実戦詰将棋だ。

第6図から、▲13銀△33玉▲22銀打!△同金▲同銀生△同玉▲31銀!まで先手勝ちになった。華麗な詰将棋のような手順だ。以下は△同玉に▲41竜△22玉▲32金で詰む。
所司七段も的確な反撃や強烈な勝負手を繰り出したものの、藤井四段が圧倒的な力でそれを封じ込めたという印象だった。

この対局の棋譜並べ動画はこちら
※5月11日の6時半に公開されます。